
略歴
1967年(昭和42年)2月 | 福岡県直方市で出生 |
1985年(昭和60年)3月 | 私立愛光学園高等学校卒業 |
1991年(平成3年)10月 | 司法試験第二次試験合格 |
1992年(平成4年)3月 | 東京大学法学部第Ⅱ類卒業 |
1994年(平成6年)4月 | 最高裁判所司法研修所修了(46 期)・福岡県弁護士会登録 |
1997年(平成9年)4月 | 第二東京弁護士会登録 |
2013年(平成25年)9月 | T&Tパートナーズ法律事務所設立(至現在) |
主な会務歴
<第二東京弁護士会>
2001年(平成13年)~2009年(平成20年) | 広報室嘱託(『NIBENFrontier』副編集長) |
2002年(平成14年)~2004年(平成16年) | 弁護士業務委員会副委員長 |
2013年(平成25年)・2021年(令和3年) | 常議員 |
2004年(平成16年) | 広報委員会副委員長 |
2011年(平成23年) | 非弁護士取締委員会委員長・研修センター副委員長 |
2012年(平成24年) | 副会長 |
2013年(平成25年) | 国際委員会委員長 |
2015年(平成27年)・2016年(平成28年)・2021年~現在 | 第二東京弁護士会業務システム検討ワーキンググループ 座長 |
2016年(平成28年)~2017年(平成29年) | 綱紀委員 |
2023年~2024年 | 財務委員会副委員長 |
2024年 | 総務委員会委員 |
<日本弁護士連合会>
2017年(平成29年)2月~2019年(令和元年)5月 | 事務次長 |
2019年(令和元年)~2023年 | 会館運営委員会副委員長・講堂委員会副委員長 |
2019年(令和元年)~現在 | 地代問題等 委員・弁護士業務改革委員会委員 |
<公職>
2013年~2018年 | 原子力賠償責任センター 仲介委員 |
2020年 | 「クロスボウの所持等の在り方に関する有識者検討会」委員 |
<趣味など>
弁護士の使命は基本的人権の擁護及び社会正義の実現であり(弁護士法第1条第1項)、弁護士は、その使命に基づき、誠実に職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければなりません(同条第2項)。
私は、2001年(平成13年)から2009年(平成21年)まで広報室嘱託として会報誌『NIBEN Frontier』の編集(副編集長)に携わり、2012年(平成24年)に副会長、2017年(平成29年)2月から2019年(令和元年)5月まで日弁連事務次長として日弁連の会務を経験させていただきました。また、2021年(令和3年)から2024年(令和6年)12月まで業務システムワーキンググループの座長として二弁の業務システム改修を企画立案し、2024年(令和6年)6月から10月までは嘱託として会費や会計等の要件定義を行い、同年12月からはプロジェクトオーナー(嘱託)として今後約2年半続く設計・開発工程を管理していく立場にあります。
これまでの二弁及び日弁連における会務経験を通じて、私は、現在の弁護士会の活動は、諸先輩方が、その時代時代に応じて、弁護士法の使命を実現するために力を尽くしてこられた歴史の上に成り立っていると考えています。弁護士会会務においては、理事者が一年で交代していく中で、組織の継続性や安定性を確保していくために、これまで先達が築いてこられた弁護士自治や立憲主義の堅持等の原理原則や指針をしっかりと継承して発展させ、後進にバトンを繋いでいくことが最も重要な使命です。
このような考え方に基づき、弁護士会の活動については、基本的に、実際に活動している会員の声を虚心坦懐にお聞きし、これまで各委員会等における取組を尊重しながら、その活動を安定的に継続し、活性化していくための必要な支援をしていくべきと考えています。個別の活動に関しては、第3に、主たる取組の内容とその継続と推進という形で記載しました。
他方で、弁護士会の活動の中には、社会状況や国民の意識の変化とともに形式化してしまったものや、技術の進歩を積極的に取り入れるべき部分も散見されます。必要であれば、ハレーションが起こらないように的確・周到な準備をした上で廃止・縮小する等、不断に改善・改革していく実行力が必要です。
このような視点から、これまでの弁護士会の活動のうち、方向性を修正したり、改善すべきと考える点を重点課題として記載しました。これらの重要課題は、重点的に取り組んで実行していくべき政策ですので、第2にその詳細を記載しました。
我が二弁は、非凡な才能と情熱を持った日弁連で活躍する多数の会員を輩出し続けています。その母体となる委員会活動の予算を増額して活性化し、日弁連の活動と緊密に連携・協力していくことで会員の業務拡大を図るとともに、日弁連における二弁のプレゼンスを大きくしていくことができるはずです。
理事者の任期はわずか1年しかありません。4月に前年度からの引継ぎを受けて会務に慣れるとゴールデンウィークと定期総会があり、7・8月は夏休みとなり、秋は弁護士会関連の行事が目白押しです。また、日々弁護士会の中で生じる大小の問題への対応に追われる中で、重要な課題に取り組む時間は本当に限られています。その限られた時間の中で、優先的に取り組んでいく課題が5つの重点政策です。
1委員会活動の活性化~委員会予算の増額
委員会の活動こそが弁護士会の原動力です。二弁には、弁護士のバックボーンである人権擁護活動から最先端の法律分野まで、ほぼ全ての業務分野を取り扱う現業系の委員会があります。委員会の活動を活性化し、そこに蓄積される様々なノウハウや知識を会員に還元していくことにより、人権擁護活動を始め様々な分野に新たに参入する会員が増え、業務分野が拡大していくはずです。そのために、現在の委員会活動の予算(令和6年度予算約1億3,076万円、令和5年度決算約6,582万円)を増額します。現在、特に現業系の委員会では、弁護士会の単年度での赤字を回避するために、事実上支出を抑制する傾向があるように見受けられますが、これを見直し、委員会からの活動提案には、その目的や会員に還元される具体的成果を事前に明らかにしてもらった上で積極的に予算をつけて、まずは試行錯誤でその活動をスタートしてもらうようにします。
我が二弁には、一般会計に約11億6,000万円の繰越金があり、会館の改修やシステム改修などの大きな支出の備えとしては基本財産基金に約40億円の積立金があります。一般会計の繰越金は、これまで会費を取りすぎて余っているものであり、委員会活動の活性化のために使うことは当然許されるはずです。
仮に、委員会の活動予算が3,000万円増えたとしても、10年で3億円です。現在、会費収入は毎年約3,000万円程度増加しており、この傾向はしばらく続く見込みで、繰越金が大きく減少することはありません。二弁が有する約50億円以上の資産と毎年の14億円以上の収入からすると、委員会の予算を増額することには、全く財政的な問題はありません。
2企業内弁護士との組織的連携の強化
企業内弁護士の数は、現在、二弁だけで800名を超えています。企業のコンプライアンス意識の高まりとともに、これまで弁護士がいなかった中小企業やスタートアップ企業も弁護士を雇用するようになってきており、企業内弁護士は今後も増加していくはずです。
企業内弁護士が所属する企業にはさらなる弁護士の雇用の需要が生まれ、企業内弁護士によりそれまで内部で処理していた法務が適正に外部弁護士に外出しされることにより外部弁護士の業務拡大にも繋がります。企業内弁護士は、いわば、企業の弁護士に対する需要を知る重要なアンテナです。日本組織内弁護士協会(JILA。2024年9月30日現在の会員数 2,207人)との連携を深め、組織的に企業内弁護士との情報共有や交流を深化させていくことにより、会員が、企業内弁護士として企業に入っていくこと、また、企業内弁護士がいる企業の業務を獲得していくための組織的な支援体制を整えます。
3若手弁護士の会務参加のための広報の強化
個々の会員が取り組んでいる活動は、人権擁護活動や社会的な活動もあれば、最先端の企業法務や技術革新を法的にキャッチアップしていくスタートアップの支援など、多岐に亘ります。弁護士会の委員会の活動は、個々の会員の活動を支援したり、特定の分野の活動に多くの弁護士に参加してもらうことによりその分野の活動を発展させる、いわば弁護士活動のマーケティングの場でもあります。
人権擁護活動から最先端の企業法務まで幅広い業務分野を取り扱っている現業系の委員会の活動は、その分野に参加していきたい若手会員にとっては、最初の足掛かりとなる舞台です。現業系の委員会の活動の広報は、その取扱業務分野に参入しようとする弁護士を増やして、業務を拡大していくための重要な手段です。委員会の活動を会員に還元していく方法として、具体的な活動内容を広く会員に公開し、随時、若手会員が委員会に委員もしくは幹事として参加できるように、広報を充実させていきます。
4国や自治体の予算がある事業への積極的な関与
弁護士が関与できる事業については、積極的にその事業に関与していくことにより、業務拡大を図るとともに、国や自治体に弁護士が協力した実績を作り、弁護士の職域を守っていくべきです。
現在、二弁は、厚生労働省からフリーランス・トラブル110番の委託事業を受託しており、令和5年度は約1億2600万円の受託報酬の支払を受け、多くの会員が 相談員として相談を受けており、業務拡大に繋がっています。
また、令和7年1月9日に、日弁連と中小企業庁との間で令和3年6月9日に策定された共同コミュニケ「中小企業の事業承継・引継ぎ支援に向けた中小企業庁と日本弁護士連合会の連携の拡充について」が改訂され、中小M&Aにおける弁護士の関与を一層促進するため、令和6年度中に、事業承継・引継ぎ支援センターにおける弁護士人材の確保に向けて,地域の実情に応じた弁護士人材の紹介等の取組を開始し、令和7年度までを目途に,当該取組を希望する地域で段階的に導入を進めて全国規模での連携強化を目指すことが明らかにされました。これは、中小M&Aに弁護士が関与していく機会であり、積極的に関与していくべきです。
私は日弁連事務次長として各省庁の課長クラスと様々な協議をしてきましたが、良し悪しはともかく、各省庁との関係において「貸し借り」は非常に重要なのが現実です。弁護士会が国や自治体の事業に協力したという実績は、国や自治体への「貸し」となり、長い目で見れば、法テラス予算の増額や弁護士の人権擁護活動に関する報酬の国費化等の日弁連が目指している国の予算獲得への側面支援になるはずです。
さらに、広く市民の人権を守るための活動ができる専門職は我々弁護士の他にはありません。国や自治体がその予算で行う事業に弁護士が関与しなければ結局他士業にその市場を奪われ、弁護士の職域が侵食されてしまいます。
弁護士が関与できる国や自治体の事業については、機会を逃さずに、積極的に関与していきます。
5二弁の新入会員を増やす~新入会員登録研修科目の見直し
現在、二弁の新規登録会員は大手法律事務所のアソシエイトが高い割合を占めています。二弁の新規登録弁護士研修には、国選弁護事件を1件経験することが含まれていますが、大手法律事務所に入った弁護士の大部分は国選弁護人名簿に登録して国選弁護事件を受任する意向がないため、新規登録弁護士の研修に国選弁護事件が含まれていない東弁や一弁への登録を希望する方が多いという声があります。
刑事弁護は、国家権力と対峙し人権を守る弁護士の重要な活動であることは言うまでもありません。しかしながら、現在、東京における弁護士一人当たりの国選事件は一年に0.4件であり(2023年版弁護士白書)、今後国選弁護事件を受任するつもりがない新規登録弁護士に義務として国選弁護事件を経験させるよりも、意欲があり国選弁護人名簿に登録している弁護士に対して十分な経験を蓄積できるだけの事件を配点していく方が、被告人の利益に叶い、また、刑事事件に意欲がある会員のスキルアップにも繋がるはずです。
既に申請による猶予が認められている(新規登録弁護士は登録時にはその制度の存在を知りません)新規登録弁護士研修の国選弁護事件を、新規登録弁護士の研修科目から外して、会員が国選弁護人名簿に登録を希望する場合には同等の研修を課すようにすることについて、国選弁護事件を所管する刑事弁護委員会の意見を確認しながら、検討を進めます。また、その他に、東弁・一弁との対比で、二弁への登録の障害となっている点がないかどうかを検証し、その是正策を検討します。
1憲法問題、人権擁護
(1)憲法問題
立憲主義を堅持し、恒久平和主義を尊重することは、弁護士・弁護士会の使命です。
当会においては、憲法問題検討委員会において、憲法をめぐる諸問題についての提言等の活動を行うとともに、市民に憲法の理念を広める活動(知憲活動)に取り組んでいます。
ロシアによるウクライナへの侵攻・北朝鮮による核開発やミサイル実験・中国による尖閣諸島海域への巡視船の頻繁な侵入や領空侵犯・台湾有事の懸念等、我が国を取り巻く安全保障情勢は非常に厳しいものがあります。
このような情勢の中で、弁護士会は、法律の専門家団体として、憲法改正やいわゆる安保法制の憲法上の問題点を含め、市民が、正確な情報に基づく冷静な議論ができるように、法律家としての専門的知見を広く正確に発信していく必要があります。
引き続き、これらの活動を推進していきます。
(2)人権擁護
人権擁護は、弁護士法第1条により定められた弁護士・弁護士会の使命です。
当会では、人権擁護委員会において、市民から申し立てられる種々の人権救済申立事件を受理・調査し、必要に応じて勧告や意見の表明をすることで、行政機関等による人権侵害状態を改善してきました。
当会の人権擁護委員会では、報道・情報に関する部会において名誉毀損・プライバシー侵害等のメディア問題などを取り扱い、外国人・民族的マイノリティに関する部会においてヘイトスピーチ問題・入管制度問題などを取り扱っています。
また、精神医療・高度先端医療に関する部会では尊厳死問題など、死刑廃止検討部会では死刑問題の在り方、受動喫煙防止部会ではタバコ・受動喫煙問題、沖縄問題部会では沖縄問題全般、埋もれた人権や被害を考えるプロジェクトチームではハンセン問題や優生保護法の問題などを取り扱っています。
いずれも重要な人権課題であって、引き続きこれらの活動を推進していきます。
2刑事弁護・裁判員裁判
(1)冤罪防止、再審法改正
刑事弁護は、弁護士の職域の最たるものであって、冤罪を防ぐことは弁護士や弁護士会の重要な使命であり、当会は、これまでも適切な刑事裁判手続の実現に向けて尽力してきました。
そのような中、昨年9月、袴田事件において再審無罪判決が言い渡されました。この判決自体は高く評価されるべきものですが、事件発生から約60年に及んだ重大な人権侵害であり、二度とあってはならないことです。改めて、日弁連とともに再審請求手続の法整備を進めていくよう活動を行っていきます。
(2)取調べの適正化
昨今の報道でも、取調時の取調官の暴言・恫喝など、未だに不適切な取調べや自白の強要が行われています。引き続き、人質司法の解消、全件・全過程の取調べの可視化、取調べへの弁護士の立会などの諸問題に取り組んでいきます。
(3)刑事事件のIT化対応
法制審議会(総会)が、刑事法(情報通信技術関係)部会の取りまとめに基づき、刑事手続のIT化に関する要綱(骨子)を2024年2月15日に採択し、法務大臣に答申しました。この骨子の内容については日弁連といくつかの弁護士会が深刻な懸念と反対意見を表明しているところであり、今後の立法の動きを引き続き注視していきます。
(4)国選弁護人の報酬額問題
刑事事件において、弁護人による充実した弁護活動が必要不可欠であるところ、いまだ国選弁護人の報酬額は低廉であると言わざるを得ません。これに対しても、日弁連とともに、引き続き国に対する働きかけを行っていきます。
(5)裁判員裁判
2009年に裁判員制度が導入されて15年が経ち、当会では裁判員センターが中心となって裁判員裁判についての情報集約や裁判員裁判に対応できる弁護士の育成を行ってきました。
裁判員裁判においては、弁護人は、裁判員、裁判官、依頼者である被告人、傍聴人が聞いて、見て分かる弁護活動をすることが求められます。裁判員センターでは、弁護人が「聞いて見て分かる」弁護活動をするため、実演型の法廷技術研修を始め、様々な研修を実施するとともに、委員会の会議において委員の知見や問題意識を共有し、その成果を会員に発信して、弁護活動に役立てる活動をしています。
引き続き、裁判員センターにおいて、裁判員裁判の情報集約と裁判員裁判の弁護活動に役立つ研修や情報の発信を推進し、若手弁護士を中心により広く裁判員裁判を担当できる刑事弁護に精通した弁護士の増加を目指します。
3消費者問題、労働問題、子どもの権利、法教育、高齢者・障がい者問題、情報公開・個人情報保護
(1)消費者問題
当会は、消費者問題に関して、消費者問題対策委員会を設けており、住宅部会、金融サービス部会、法律相談・消費者法部会、医療・PL部会、電子情報部会、公益通報者保護部会の6部会に分かれて消費者問題に対処しています。
当会は、例年、重要な消費者問題について意見書やパブリックコメントを提出して建議を行ったり、二弁会員向けや一般市民向けの研修・講演などを行っており、引き続きこれらの活動を推進していきます。
現在、統一教会に関する被害者救済が大きなテーマとなっており、被害者救済手続が本格化した場合には、消費者問題対策委員会を中心として、情報収集を行い、迅速に必要な対応を行っていきます。
(2)労働問題
労働者の生命や健康を守り、労働者の権利を保護することは、雇用者側か労働者側であるかを問わず、社会的に弁護士に求められている重要な使命です。
当会においては、労働問題検討委員会において、①労働法制の調査、研究及び立案、②労働者・失業者の生存権保障の実現と貧困問題の解決に必要な社会保障制度の調査、研究及び立案、③労働事件の取扱いや貧困問題の解決に有用な知識の普及、④労働や貧困の問題に関する法律相談の企画及び実施など行っています。
労働法分野のフリーランス・事業者間取引適正化等法の立法や、育児・介護休業法、高年齢者等雇用安定法の改正、労働基準法施行規則の改正などについて、提言等を行っています。
また、いわゆるフリーランス(個人事業主として働く人々)の問題に取り組み、当会が国から受託して2020年11月から実施している「フリーランス・トラブル110番」の運営を実質的に担っており、最近では、『労働事件ハンドブック 改訂版』(2023年6月発刊)の出版も行っています。
その他、会員向けには、労働相談の事例検討会や最新判例の研究会なども開催する等幅広い活動を精力的に行っており、引き続き、これらの活動を継続していきます。
(3)子どもの権利
令和5年4月、こども基本法が施行され、改めてすべてのこどもが自立した個人として健やかに成長することができること、心身の状況や置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指すことが示されました。また、令和4年6月には児童福祉法が改正されており、こどもの意見聴取の仕組みの整備も行われることとなりました。
このようにこどもを取り巻く法整備が進められているところですが、いまだ虐待問題、いじめ問題、学校事故、闇バイト等の問題は後を絶ちません。
当会の子どもの権利に関する委員会では、他会に先駆けてLINEを利用しての子どもSNS相談を開始し、子どもからの直接の相談を受ける窓口を設置しています。またいじめ予防授業を通じて、子ども達自身に、いじめの問題についての理解 を深めてもらっています。
今後、これらの活動を推進していくとともに、改めて、児童相談所への弁護士配置やスクールロイヤーの充実、学校問題ADRの活用について、検討を進めていきます。
(4)法教育・出張授業等の推進
市民が、自由で公正な社会の担い手となるには、教育課程において、法の背後にある基本原理や価値を理解し、様々な価値観をもった個人がお互いを尊重しつつ自らの意見を他者に伝え、それぞれの意見を調整することでルール(法)が作られているということを理解する必要があります。
そのため、当会では、法教育の普及・推進に関する委員会において、教育機関と連携しながら、法教育の出張授業を実施したり、裁判傍聴の引率をしたり、夏休みや春休みには児童生徒を対象に模擬裁判や身近な社会課題の解決を題材としたジュニアロースクール(体験型授業)を開催しています。
当会における法教育は、若手会員が重要な担い手となっており、生徒や学生が、弁護士から直接法的な原理原則を学び、法律に触れる貴重な機会です。
引き続き、これらの活動を推進していきます。
(5)高齢者・障がい者問題
当会においては、高齢者・障がい者総合支援センター運営委員会が、高齢者・障がい者等のための権利擁護、ホームロイヤー・財産管理を行なう総合支援センター「ゆとり~な」を運営しており、ホームロイヤー・財産管理や身上保護に関する法律相談、受任弁護士のあっせんを行なっております。また高齢者・障がい者に対する虐待等の権利侵害への対応や法律相談、精神科病院における処遇改善・退院請求に関する対応等も行なっています。
引き続き、高齢者・障がい者の保護のために、自治体・社会福祉協議会等との連携を含めた活動を推進していきます。
(6)情報公開・個人情報保護
当会においては、情報公開・個人情報保護委員会が担当しており、情報公開の適正な運用の提言や個人情報保護制度等も含めた情報法制全般に関する提言・研究活動・出版活動などを行っています。
引き続き、こうした活動を推進していきます。
4民事介入暴力対策、犯罪被害者支援
(1)民事介入暴力対策
暴力団をはじめとする反社会的勢力による民事介入暴力に対しては、当会では民事介入暴力対策委員会で対応しています。
暴力団は、次第に弱体化してきていますが、特殊詐欺等の組織犯罪の黒幕として健在であり、引き続き注視していく必要があります。
また近時は、クレーマー等による不当要求事案が多発しており、引き続き、警視庁など外部の関係諸機関や他の弁護士会と協力・連携して、不当要求への対応に取り組んでいきます。
(2)犯罪被害者支援
当会では、犯罪被害者支援委員会において、犯罪被害者等を対象とする無料電話相談、事件受任、研修の企画・実施、合宿での事例検討や施設の見学など様々な活動を行っています。
平成16年に成立した犯罪被害者等基本法に基づく基本計画が平成17年12月に策定され、平成18年10月からは日本司法支援センターによる被害者支援業務が、平成20年12月には被害者参加制度がそれぞれ始まり、被害者支援において弁護士が果たすべき役割は大きく、犯罪被害者支援委員会の役割もますます重要となっています。
引き続き、国選被害者参加弁護士制度のさらなる充実を図るとともに、東京地方検察庁、警視庁及び民間支援団体等他機関との連携も進め、損害賠償請求の実効化等にも取り組んでいきます。
5性の多様性の尊重、男女共同参画
(1)性の多様性の尊重
個人がいかなる性的指向や性自認を有するかは、個人の尊重と幸福追求権を規定した憲法13条により保障されており、これを理由とする差別は、法の下の平等を規定した同14条に反します。
当会では、全ての性の平等に関する委員会において、性、性的指向や性自認のいかんにかかわらず差別されることなく平等に暮らすことのできる社会を目指し、法制度の見直しやセクハラ・マタハラ・パワハラ・DV事件への対応などに関する活動を積極的に行ってきました。
引き続き、これらの活動を推進していきます。
(2)男女共同参画
当会は、弁護士会初の男女共同参画基本計画を策定し、第二東京弁護士会会長を本部長とする男女共同参画推進本部を立ち上げました。これまでに、副会長クオータ制(副会長6名のうち女性2名を優先的に選任する)、男女を問わない育児期間中の会費免除制度や研修等参加のためのベビーシッター費用の援助制度の創設、ワーク・ライフ・バランスに配慮する法律事務所を表彰するファミリー・フレンドリー・アワードの新設等、数々の施策を実現しました。2022年には、パリテ(フランス語で男女同数の意)を最終目標に掲げる第4次第二東京弁護士会男女共同参画基本計画がスタートしています。
男女共同参画はダイバーシティの第一歩でもあり、第二東京弁護士会の活動の活性化、適正化の原点と考え、引き続き、これらの活動に取り組んでいきます。
また、60期以降においては女性弁護士の比率が20%を超えており、現時点で、出産・育児をする女性弁護士が増加しています。産休・育休の制度に加えて、男女を問わず出産・育児の悩みやキャリアとの両立等若手弁護士が抱えている悩みについて、若手弁護士の等身大のニーズを調査した上で、出産・育児の経験者である弁護士からの経験に基づく有効なアドバイスを受けたり知見を共有していく仕組みや機会を設けていくことを検討していきます。
6環境問題、災害対策
(1)環境問題
近時、地球規模での気候変動が進んでおり、従来では起きなかった大規模な森林火災、集中豪雨、河川の氾濫、巨大台風、土砂災害、歴史的豪雪など大規模災害が相次いでいます。大規模な災害によって市民の生命や財産が失われている状況に鑑み、環境問題を研究し、その対策を検討することは重要です。
当会では、環境保全委員会において、公害・環境問題に関する電話相談、公害・環境紛争を解決する制度やSDGsに関する検討等を行っており、引き続き、これらの活動を推進していきます。
(2)災害対策
東日本大震災の経験を踏まえ、首都直下型地震を始めとする大災害の下でも弁護士会の機能を維持するため、当会では、「第二東京弁護士会BCP」(事業継続計画)を策定し、毎年改訂しています。
被災者支援活動としては、都内に避難している東日本大震災被災者の方々の支援を粘り強く続ける一方、災害被害を受けた弁護士会からの依頼を受けて当会弁護士を派遣し、または被災者電話相談を引き受ける等の側面支援を実施しています。
引き続き、これらの活動を推進していきます。
7弁護士業務の拡大・発展、国際活動
(1)弁護士業務の拡大・発展
弁護士業務の拡大・発展は、基本的人権の擁護と社会正義の実現へとつながります。当会においては、弁護士業務センターがこのような意識の下で、弁護士が幅広い分野で十分に活躍し存在意義を発揮できるようになることを目指した企画立案活動等を行っています。
主な活動には、自治体業務への協力、中小企業サポート、修習生向け就職説明会、若手弁護士サポート、IT活用、他士業・他業種との連携、組織内弁護士推進、社外役員推進、法律事務所職員向け研修等があり、引き続き、社会に存在する弁護士にかかわる様々なニーズにこたえるべく業務改善、活性化方策を推進していきます。
(2)弁護士費用保険
当会では、リーガル・アクセス・センター運営委員会を通じて、弁護士費用保険対応した担当弁護士の紹介制度を運営しています。弁護士費用保険は、市民の弁護士費用負担を民間の保険で賄う制度であり、利用者は弁護士費用の全部または一部を保険で賄うことができる、弁護士の利用を促進する制度です。
日弁連と連携して、弁護士費用保険による弁護士の利用を進めていくために、引き続き、円滑な紹介制度の運営に努めていきます。
(3)法律相談
当会では、一人でも多くの方が弁護士にアクセスでき、安心して利用でき、相談の結果に満足していただけることを目指して、法律相談センター運営委員会において、弁護士会法律相談センターの企画運営を行っています。当会独自で運営している四谷法律相談センター、デパート相談では、相談者が相談する弁護士を選ぶことができる弁護士アポを立ち上げ、法律相談を担当する弁護士の自己紹介や得意分野などを掲載しており、利用者からの評価を得ています。また、各種の専門の法律相談を実施しています。
引き続き、利用者のニーズを具体的に検討しながら、利用者が利用しやすく、満足度の高い法律相談センターの運営を行っていきます。
(4)仲裁
当会では、仲裁センター運営委員会を通じて、平成2年3月に全国の弁護士会に先がけて設立した紛争解決機関(ADR=Alternative Dispute Resolution)である仲裁センターの運営をしています。仲裁センターで行っている仲裁や和解あっせんでは、弁護士が間に入って紛争解決に向けての話し合いを行い、裁判所での手続に比べて、機動的で柔軟、当事者の納得のいく解決ができるという特色があります。
引き続き、民間ADR機関である仲裁センターにおいて、柔軟、簡易、迅速、公正で満足度の高い紛争解決を実現していきます。
(5)住宅紛争
住宅の品質確保の促進等に関する法律(住宅品確法)、住宅瑕疵担保履行法に基づくADRとして、全国の弁護士会に住宅紛争審査会が設置されており、住宅紛争処理委員を中心として、住宅紛争の解決に当たっています。住宅紛争審査会運営委員会がその運営の中核を担っています。
引き続き、住宅紛争審査会の円滑な運営を行っていきます。
(6)国際活動
当会は、国際委員会において、国際的な法的諸問題に関する調査・研究、諸外国・地域の国際法曹団体等との交流、外国法事務弁護士の資格審査への協力等の活動を行っています。他国の弁護士・弁護士会との交流によって、自らを他国と客観的に比較することが可能となります。
引き続き、こうした活動を推進していきます。
8研修、法曹養成、司法修習、若手会員支援
(1)研修
弁護士の関与する分野がますます拡がり、急速に変化し続ける現代社会において、高い職業倫理を保ち、高度な専門知識と最新の知見を習得するために研鑽をし続けることが、法律専門家である弁護士にとって不可欠となっています。
当会においては、研修センターが、これらの要求に応えるべく、会員弁護士の質の維持と向上のため、倫理研修、専門研修、新規登録弁護士研修、継続研修など各種研修制度の企画・実施を所管し、種々工夫しつつ熱心に活動しています。
倫理研修における解説がYouTubeで配信されるようになっていますが、会員がいつでもどこでも見ることができるように、さらに研修の動画配信を充実させていきます。
(2)法曹養成問題・法科大学院問題
法曹養成問題・法科大学院問題は、時流に合った不断の改革が必要であって、2020年度からは、法学部に「法曹コース」が設置され、3年の法曹コースと2年の法科大学院既修者コースを組み合わせて最短で5年で法学部と法科大学院を卒業できることとなりました。
これまでと同様、日弁連と連携して、引き続き、法科大学院制度を中核とした法曹養成制度を維持発展させるための活動を推進していきます。
また、法曹志望者数は、底から脱し回復傾向にあるものの、まだまだ少ない状況です。とりわけ、法学部以外の、社会人や理系出身者の法科大学院志願者は少なく、未修者教育の更なる充実にも取り組む必要があります。
法曹養成・法科大学院委員会では、小学校から大学まで出張授業を行うなどし、若者に法曹・弁護士の魅力を発信してきました。法曹志望者の増加のため、このような取り組みをさらに推進していきます。
(3)司法修習
当会は、司法修習委員会において、弁護修習で当会に配属された司法修習生を教育・指導しています。引き続き、修習生にとって、効果的かつ有用な弁護実務修習を実施できるように、修習のあり方も含めて議論を進め、その対策の検討を進めていきます。
(4)若手会員の親睦・交流活動の支援
当会には、弁護士登録10年以内の若手弁護士で構成される「若手の、若手による、若手のための」委員会として、NIBEN若手フォーラムがあります。
若手会員同士が積極的に意見交換をしたり、懇親や研修等を通じて仲間作りをすることは、若手会員自身のメリットも多々あるだけでなく、将来の当会を支える人材を育成することでもあります。今後も、同フォーラムを若手会員の会務参加の入り口として機能させるとともに、同フォーラムと各委員会との連携を図ることにより、当会において若手会員の活動の場を広げ、若手会員の意見を会務に反映させるようにしていきます。
引き続き、若手弁護士の親睦・交流活動を支援していきます。
9非弁対策、業務妨害対策
(1)非弁対策
弁護士法は、弁護士(または弁護士法人)でない者が業として法律事務を取り扱うことなどを禁止すると共に(72条)、弁護士が、このような違法な非弁護士に名義を貸したり、あるいは違法な非弁護士から事件のあっせんを受けたりすることを禁止しています(27条)。これに違反すると、懲役を含む刑事罰の対象となります(77条)。
特に非弁提携行為は、依頼者の利益を損ねることはもちろん弁護士に対する社会的信用や評価を毀損する悪質な違法行為です。当会においては、非弁護士取締委員会において、依頼者を含む一般人や弁護士等から情報提供を受け、現地調査や関係人の事情聴取、証拠書類や物の検討などを行って事実関係を確定し、非弁護士や提携弁護士に対して警告・告発・懲戒請求等の措置を決定して取締を行っています。
弁護士に対する社会的信用や評価を守り、依頼者が違法な非弁行為により被害を被ることがないよう、引き続き、非弁行為には厳正・厳格に対応していきます。
(2)業務妨害対策
弁護士への業務妨害は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士という職業に対する攻撃であり、妨害を受けた弁護士個人だけの問題ではなく、弁護士会として対応すべき問題です。
当会においては、弁護士業務妨害対策委員会を設置して、弁護士業務を妨害する行為の予防及び排除に関する諸活動を行っています。業務妨害を受けている弁護士からの支援要請への対応、会員向けの研修会の企画・実行、警視庁や他の弁護士会との連携等、引き続き、業務妨害に対する有効な対応を検討・推進していきます。
10弁護士自治の堅持
弁護士自治は、弁護士が、国や自治体の違法行為に対して対峙し、基本的人権を擁護していくために必須であり、我々は、先輩方が勝ち取ってきた弁護士自治をしっかり堅持していかなければなりません。そのためには、個々の弁護士が、常に深い教養の保持と高い品性の陶冶に努め(弁護士法第2条)、高い倫理を持ち、弁護士会が高い自浄能力を持ち続けることが必要です。
弁護士自治を支える委員会としては、綱紀委員会・懲戒委員会・資格審査会・紛議調停委員会があり、倫理委員会や非弁護士取締委員会等も重要な役割を担っています。引き続き、これらの委員会の円滑・適正な活動を支えていきます。
また、日弁連規程に基づく依頼者の本人特定事項の確認等に関する年次報告書の提出は、FATF勧告対応における弁護士自治を守るための重要な制度です。引き続き、全会員からの提出を実現すべく、必要な措置を講じていきます。
1業務システム改修による会務の合理化・省力化の実現
民事訴訟が2026年(令和8年)5月までに完全に電子化されることが決定しており、弁護士には、例外なく、Web経由のリモートでの完全な電子的手続に対応する能力が必要となります。これを前提に、二弁においても、会員や職員がWeb経由のリモートで会務の諸手続きや業務を行うことができるように、会員に対する通知や手続の完全な電子化を推進していきます。これは、会務を合理化・簡素化して会員や職員の無駄な労力を減らすとともに、出産や育児で移動が困難な会員や職員が事務所や自宅から会務に参加できるようにして、会員や職員のワーク・ライフ・バランスを実現していくための最も重要な課題です。
現在進行中の二弁のシステム改修は、完全なWebシステム化と会務に関する諸手続や通知で可能なものはすべて電子化することを目標としており、システム改修が成功すれば必然的に会務の合理化・簡素化が実現できるはずです。
私は、業務システムWG座長として、当初からシステム改修の企画・立案を行ってきました。おそらく、事務局の事務フローを最もよく知る会員の一人であり、令和7年1月からプロジェクトオーナーとしてプロジェクトを総合的に推進・管理していく予定です。会長となった場合には、会長の立場でプロジェクトの成功に向けた目配りをして、システム改修を成功に導くべく全力を尽くします。
2裁判所立川支部本庁化・弁護士会多摩支部本会化
420万人を超える多摩地域の市民の方々の利便性を高めるため、従来の執行部の方針を継承して、引き続き、裁判所の立川支部の本庁化に向けて、多摩支部と協調して活動していきます。弁護士会多摩支部本会化については、多摩支部や多摩支部会員の意見を聞きながら、早期の実現に向けた取組みを継続します。
3公設事務所
当会は、公設事務所として東京フロンティア基金法律事務所(以下「同事務所」といいます。)を運営しており、その運営については公設事務所運営等支援委員会が支援しています。同事務所は、日弁連が弁護士過疎地域に設置しているひまわり公設事務所へ赴任する弁護士や法テラスのスタッフ弁護士を養成する母体となり、また、都市部における司法アクセスの改善を実現するために市民から積極的に事件を受任する等、司法アクセスの改善のため大きな役割を果たしています。
同事務所は、令和5年は年間を通して売上が好調であったため、当会からの援助金支出(運転資金としての援助金で賃料・水道光熱費等の補助及び他職経験弁護士の給与を除いた額)はなく黒字となりました。
中長期的な視点では、所長となる人材や過疎地への赴任を希望する弁護士の確保等、継続的・安定的な運営を実現していくために克服すべき課題もあり、当会による賃 料・光熱費の負担も生じ続けることから、その運営を注視し支援を継続していきます。
4法テラス
日本司法支援センター(法テラス)は、民事法律扶助業務、司法過疎対策業務、国選弁護関連業務、犯罪被害者支援業務、法律援助事業などを行っており、低所得者の司法アクセスに大きく貢献しています。他方で、法テラスの契約弁護士からは、法テラスの弁護士報酬基準が、業務量に比して低額であるとの批判もあるところです。事件処理に要する定量的なデータを示すことにより司法予算の増額を要求する等、引き続き、日弁連と連携して、問題点の検討及び改善に取り組んでいきます。
5100周年
二弁は2026年(令和8年)に設立100周年を迎えます。100周年を祝う記念事業が企画されていますが、先人達の取り組みに敬意を払って、二弁のこれまでの歩みをしっかりと振り返り、次の100年に向かっての歩みの指針となるよう、100周年記念行事実行委員会を支援していきます。
浅学菲才の身ではありますが、私に二弁のためにお役に立てる機会を与えていただきたく、会員の皆様のご支援・ご指導を何卒よろしくお願い申し上げます。
以上
発行責任者:
髙﨑玄太朗選挙対策本部本部長 伊東 卓